国際教養:
グローバル化社会に生きる資質・能力を育成するための独自の学習領域

目標と養いたい力

国際理解・人間理解・理数探究に関わる現代的な諸課題についての総合的な学習を通して,主体的・協働的に課題を解決し,自己の生き方を考えることができるようにするために,以下の資質・能力を養います。

  • 課題の解決に必要な知識及び技能を身に付けて,多様な文化・社会の在り方やそこで生きる人々及び様々な現象について理解を深める。また,課題解決のための方法について知る。
  • 課題から問いを見いだし,その解決に向けて仮説を立てたり,調査のために様々な方法を実践したり,得た情報を基に考えたりする力を身に付けるとともに,考えたことについて根拠を明らかにしてまとめ,表現し,異なる文化・背景を持つ他者と共有してディスカッションする力を身に付ける。
  • 課題の解決に主体的・協働的に取り組むとともに,多様な文化・背景を持つ他者と互いのよさを生かしながら,自ら社会に参画しようとする態度を培う。

ここで国際理解・人間理解・理数探究とは,現代的な諸課題を見る3つの視点であり,また,「国際教養」の内容を構成する際の3つの視点でもあります。

  • 国際理解…自国の文化・他国の文化を含めて,多様な文化・社会の在り方について理解を深める。
  • 人間理解…社会を支える一員として,学校・地域・国・世界に生きる人々の生き方や社会の在り方について考え,思いやりの心を身につける。
  • 理数探究…身の回りや世の中の様々な事象を科学的視点からとらえ,社会に活用していく方法について考える。

単位数

学年 科目名等 時数 単元名・内容
総合的な学習の時間 3 国際1(情報・理数探究)
Learning in English 1
富士ワークキャンプ
総合的な学習の時間 2 国際2
Learning in English 2
総合的な学習の時間 3 国際3,
Pre Immersion
Learning in English 3
沖縄ワークキャンプ
総合的な探究の時間 1 Personal Project
課題研究
総合的な探究の時間 1 課題研究
バンクーバーワークキャンプ
総合的な探究の時間 1 課題研究
6 国際A
国際B
2
1
[2019年度開設講座]
国際A 「国際協力と社会貢献」「憲法と人権」
国際B 「ファシリテーション実践」「文学探究」
「応用数学」「College Prep」

学習内容 (具体例・生徒の作品・活動の様子)

国際1~3(1年次~3年次)

各教科の枠を超えた現代的な諸課題を,学校行事と関連させながら探究し,同時に研究(調査)方法についても学びます。ESD(持続可能な開発のための教育)やSDGs(持続可能な開発目標)を意識した取り組みも行っています。外部の方をお招きして講演会を開催したり,生徒自ら主体的なワークショップを企画・運営したりする機会も多く設けています。

Learning in English(1年次~3年次)

外国人講師の先生と英語「を」学ぶのではなく英語「で」様々な現代的課題について学びます。

Pre Immersion

後期課程で開設されているイマージョン授業(英語で教科の内容を学ぶ授業)に向けて,3年生全員に対して社会・数学・理科・美術について英語で学ぶ授業を実施しています。

Personal Project(3年次~4年次前半)

MYPの集大成となる,「あなた自身が考え,実践する,あなただけのプロジェクト」です。それまでの学習で培った知識やスキルを活用し,特定のトピックに関する研究論文や,オリジナルの芸術作品,文学作品,科学的実験や観察,発明もしくは特別にデザインした作品もしくはシステムなどに1年以上かけて取り組みます。
テーマ例「小学生における英語発音向上のためのアクティビティーの提案」  作品形態:活動
「紙の本の魅力を伝える装丁を作る」  作品形態:装丁デザイン
「複数のジャンルの要素を持つ音楽の可能性を探る」  作品形態:音楽作品
「アボカドの種と変色の関係性」  作品形態:論文
「効果の高い販促ポップの考案」  作品形態:ポップ

課題研究(4年次後半~6年次)

自ら研究課題を見いだし,適切な研究方法を実践し,自分自身による考察を通して新たな知見を得て,それを他者と共有することで課題解決に貢献します。サイエンス部門とグローバル部門のどちらかを選び,約2年にわたって研究を進めます。
テーマ例(サイエンス部門) 「スマートフォンを用いたバナナの糖度推定」
「音の影響による植物の生理作用の変化」
「フライングディスクの軌道」
テーマ例(グローバル部門) 「障がい者と相互理解・交流に対する意識の向上~生徒のためのきっかけ作り~」
「ICTを活用した異文化理解の促進」
「外国人観光客が日本の医療を受けやすくするための改善策 」

ISSチャレンジ

生徒個人およびグループによる独自の研究活動(課題研究)の奨励を目的とした,校内での課題研究コンテストです。全生徒が任意で参加でき,1年間かけて取り組みます。ファイナリストは3年生以上の全生徒の前で研究発表し,外部評価委員を加えた審査のもと,最優秀者などが決まります。

[2019年度ISSチャレンジ ファイナリスト]
〔サイエンス部門〕
「アントシアニン分解能力を持つ腸内細菌の探索」
「人工宝石の製造」
「積分ゼータ関数の拡張」
「セイロンベンケイソウの不定芽形成の仕組み」
〔グローバル部門〕
「スタートアップで考えるe-sportsへの取り組み」
「市民として未来を構築するための歴史教育を考案・実施する」
「子どもの貧困対策における複合的なアプローチの効果の検証」
「ドキュメンタリー作品による原子力発電に対する意識改革」

国際A・国際B(6年生)

グローバル化社会に出るにふさわしい人間として,教科を超えた幅広い分野に関心を持ち,かつ関心を持つ分野における深い知識を身につけるため,学校設定教科として「国際」を設定し,「国際A」(2単位),「国際B」(1単位)という科目を開設しています。教科の枠に収まらない内容,あるいは教科の内容に近いが教科の枠ではなかなか実現しづらい内容を開設する,特色ある科目となっています。
[2019年度開設講座]
国際A 「国際協力と社会貢献」「憲法と人権」
国際B 「ファシリテーション実践」「文学探究」「応用数学」「College Prep」

国際A「国際協力と社会貢献」
国際B「ファシリテーション実践」

 

ワークキャンプ

「国際教養」の目標を達成するため,1学年では富士山近郊で,3学年では沖縄で,そして5学年ではカナダのバンクーバーでワークキャンプを実施します。

1年生 富士ワークキャンプ
2019年度テーマ:
「富士山と富士山周辺地域を、様々なテーマに基づいてフィールドリサーチし、立定的に捉えよう」
実施フィールド:
山梨県富士吉田市、南都留郡忍野村など
国際教養の3つの柱に基づいたフィールドリサーチ(生徒が設定するリサーチクエスチョンを、現地で確認し深めていく)をメインプログラムとして、1年生の国際教養への理解を促進するとともに、チームビルディングプログラムでクラス・学年としてお互いを理解することを目的としています。
2019年度のスケジュール:

Day1 AM 学校発 → 山梨県立富士山世界遺産センター
PM 【樹海洞窟体験】(ホールアース自然学校)

Day2

AM 【チームビルディングプログラム】(野外教育事業所ワンパク大学)
PM 3コースに分かれてのフィールドリサーチ①(各コース2箇所程度)

Day3

AM 3コースに分かれてのフィールドリサーチ②(各コース2箇所程度)
PM 現地発 → 学校着

2019年度フィールドリサーチ先一覧:

人間理解

国際理解

理数探究

フィールド
リサーチ①

おし街散歩
(一般財団法人ふじよしだ観光振興サービス)
忍野八海(忍野村観光協会) 富士山の銘水株式会社
忍野八海(忍野村観光協会) テンジンファクトリー 富士山レーダードーム館

フィールド
リサーチ②

富士山の銘水株式会社 富士吉田市役所富士山課 山梨県富士山科学研究所
NPOカエル舎 月江寺界隈・新倉山浅間神社
(富士吉田定住促進センター)
忍野八海(忍野村観光協会)
樹海洞窟体験
忍野八海


3年生 沖縄ワークキャンプ
理数的な学びを深めるフィールドワークを通して現代的な課題を読み解く力を伸ばし,得られた情報を再構成しまとめ上げる力を養うこと,現地の方との交流を通して人との関係をつくり出す力を伸ばし,コミュニケーションの重要性の認識を深めてその能力を伸ばすこと,沖縄という地域や歴史文化を学習することにより多文化理解を深めることを目的として,3泊4日の沖縄ワークキャンプを実施しています。
民泊を通しての現地の文化の体験,平和学習,沖縄の自然環境を活かした理数探究フィールドワークを実施する点に特徴があります。
スケジュールの例(2019年度):

DAY 内容 宿泊
1 平和学習 ホテル
2 理数探究フィールドワーク ホテル
3 民泊体験 民泊
4 ワークキャンプまとめ・那覇市内(国際通り)散策

平和学習の実施例(2019年度)
ガマ入壕,ひめゆり平和祈念資料館,平和の礎,講演
理数探究フィールドワークのコース例(2019年度)

  • 大浦湾マングローブ観察 美ら海水族館バックヤード見学
  • 慶佐次川カヌー体験&マングローブ観察 恩納村万座毛海岸周辺イノー観察
  • やんばるの森清流リバートレッキング 羽地内海シーカヤック&無人島散策
  • 慶佐次川カヌー体験&マングローブ観察 石川ヌチシヌジガマ鍾乳洞探索

民泊体験先
金武町・宜野座村 各民家


5年生 バンクーバーワークキャンプ
本校独自の学習領域「国際教養」の集大成として,海外で異文化に触れ,多様な社会・文化の在り方を知るとともに自国の文化を再認識すること,およびホームステイや現地校交流を通して,異文化に生きる人々と意見を交わす(ディスカッションする)機会を持ち,現代社会の課題に対する意識を共有することを目的として,カナダのバンクーバーにて6泊7日のワークキャンプを実施しています。
学年の全員が,ホームステイを通しての現地の文化の体験,現地の学校での授業参加,現地の中高生に向けての日本の文化のプレゼン,現地の高校生との現代的諸課題に関する英語でのディスカッションを実施する点に特徴があります。
スケジュールの例(2019年度):

DAY 内容 宿泊
1 東京・成田→バンクーバー 班別自由行動 ホテル
2 コース別行動→ホームステイ家族と合流 ホームステイ
3 リメンバランスデイ(ホストファミリーと過ごす休日) ホームステイ
4 現地校(3校に分かれる)の授業参加 ホームステイ
5 現地校にてプレゼン,ディスカッション ホームステイ
6・7 バンクーバー→東京・成田 機内泊

コース別行動の例
オリンピックオーバル,バンクーバールックアウト,リン渓谷,スティーブストン缶詰工場,グランビルアイランドなど
現地交流校
Langley Christian School,Pacific Academy,Burnaby South Secondary School
ディスカッショントピックの例(2019年度)

  • Should learning a second language be mandatory in school? Explain with reasons.
  • What are the pros and cons of hosting the Olympics in your country? How can we minimize the cons?
  • What is the ideal time/bell schedule for effective learning and satisfying school life at school? Explain with reasons.

社会貢献活動(Social Action)
生徒活動の軸の一つである社会貢献活動を本校では「Social Action(社会課題にたいしてインパクトを与える行動)」と称し、生徒の積極的な行動を促しています。IBのMYPにおける「Service & Action」も内包しています。

©東京学芸大学附属国際中等教育学校国際教養委員会
©東京学芸大学附属国際中等教育学校国際教養委員会

Descriptorでは、ボランティア活動や寄付だけでなく、社会課題に取り組むリサーチ活動や研究活動もSocial Actionに含むと示しており、活動に関してはSocial Action Recordでの記録とジャーナルの作成を通してふりかえりができるようにしています。

照姫まつりでの案内ボランティア
SDGs Goal4を啓発する校内展示イベント